イギリスの大学院に留学する決心をした一番の理由は、システムエンジニアとして海外就職するには日本から応募しても海外企業にビザをサポートしてもらうのはなかなか難しい現実を知っていたからです。
私は日本の大学では文系を専攻していましたが、3年ほど無経験からIT企業で開発・運用保守などを経験しました。英語は日常会話に問題がないレベルです。
しかし、イギリスを始め、たくさんの先進国では新たに移民を受け入れよりもなるべく自国の人材を優先的に採用する傾向があり、私のような理数系の学位もなく、経験は3年(ジュニアレベル)程だけでは、現地の人との競争に勝つのはかなり難しいと思いました。
今日は、イギリスで理数系の修士号を手に入れ、実際に現地で就活をした時に更に目の当たりにした予想外の海外就職の難しさについて書いていきたいと思います。海外就職を目指す方が今からできることも含めて書いていきますので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
全ての情報は私の個人の経験に基づいた内容になりますので、職種や、国、地域によって事情が違う場合もあります。あらかじめご了承ください。
- 就労資格がないと門前払いされる
- 経験がないと話にもならない
- 経験は海外でも実用性があるものが必要
- 応募してもほとんどの場合は返事すら来ない
- スポンサーできる企業はスポンサーする人を選んでいる
- 履歴書は一応フォーマットがある
- まとめ
就労資格がないと門前払いされる
いきなりきついことを言いますが、就労資格がないと本当に相手にすらされないことが多いです。
私の履歴書をネットのあらゆる求人サイトに載せたら、嬉しいことにいくつものエージェントが電話してきました。しかし現在の滞在資格が学生ビザだと知るとすぐに顔の色が変わって「残念ながら長期働ける資格がある人しか求人していない」と言われ、さっさと電話を切られました。
私の大学院のコースはPlacement Year付きで、9月から一年間フルタイムで働ける旨も、「学生ビザが切れる前にはパートナービザを申請する予定なので実質ビザのスポンサーは必ずしも必要じゃない」と散々説明しても、ほとんどの場合はエージェントの担当者が学生ビザの労働許可のシステムをよくわかっていないからなのか、現在のイギリス滞在条件が「学生ビザ」と言っただけでもうほかの話すら聞き耳を持ってくれない印象を受けました。
せっかく自分のスキルが担当者の目に留まったのに、自分がEU圏やUK出身じゃないってだけで門前払いされるのは本当に精神的につらかったです。電話を切られるたびに他の国に行こうかなと何度も考えました。
経験がないと話にもならない
イギリスの名門大学UCLの修士号を持っている彼氏の妹さん(イギリス人)ですら、卒業して2年経った今でも仕事探しで非常に苦労しています。
彼女が希望しているのは映画に携わる仕事なのですが、IT系と同じく専門的な要素が多い業界なので、学位があっても経験が少ないとなかなか厳しく、この二年間で採用してもらえたのは短期の仕事や無給のインターンシップのようなお仕事ばかりでした。
専門知識が必要じゃない仕事はわざわざ外国人を雇う必要はないから、海外就職は絶対に無理なのは言うまでもなく、専門知識が必要な業界でも経験がないといきなり採用してもらうのは厳しいです。
新卒枠を設けている会社もありますが、日本みたいにたくさん採用していないので、ここでも競争で現地の新卒生に勝る必要があるので、簡単ではないです。締め切りも早いので注意しなければいけませんが、興味がある方は「Gradurate jobs」などで検索してみてください。
更に最初に書いた内容を繰り返しますが、私たちは滞在資格のビザ問題もあるので、現地の人との競争に勝つには、やっぱり日本にいるうちに経験をたくさん積んだ方が後々海外の就活市場で自分の強みになると思います。
経験は海外でも実用性があるものが必要
イギリスで本格的に就活を始めてから気づいたのが、イギリスで求められているスキルは日本と若干違うことです。
特に私は日本では古い大手の会社に勤めていたのですが、新しい技術に関してはわりと保守的で、使っていたツールには日本製(海外ではあまり知られていない)のものが多かったので、いくら使いこなせてもあまり履歴書上ではアピールポイントにもならず、ちょっと悔しかったです。
これから日本でIT企業に転職を考えている方は、まずは自分が目指したいポジションの海外の求人情報についてよく研究したほうがいいです。
例えば私の場合はイギリスでバックエンドのエンジニアとしての仕事に就きたいのですが、「London back-end developer」などで検索し、各求人ページに書かれているツールや言語に注目し、たくさん見ていくうちにだんだん需要が多いスキルや言語がわかるようになってくるので、日本でそれらのスキルをガッツリ学べそうな会社で働くようにすると絶対に良いです。
履歴書は面接につなぐ大事な手段なので、もし今日本でやってる仕事内容を履歴書に書いても自分を売り出せそうにないなら、もっと海外で需要が高いスキルを学べる職場に変えた方がいいかもしれません。
海外の転職エージェントや人事担当者は、LinkedInをはじめ、様々な求人サイトの上からキーワードを検索し求人要件にあてはまる人を発掘しています。現地のIT会社の求人要件に当てはまるスキルが多いほど、企業の目にも留まりやすくなるはずです。
応募してもほとんどの場合は返事すら来ない
就活が始まったら、一般的には日本と同じくまずは求人サイトにたくさん登録し、最新版のCVも含め自分の情報を載せて、片っ端から応募をしていくのですが、びっくりすることにほとんどの場合何も返事がきません。
これはもう私のような留学生だけではなく、就活中のイギリス人の友達も「返事待っても待っても来ない問題」に悩まされてます。
返事がないことがある意味「返事」なのでしょうね。
私の経験からすると、求人サイトよりもLinkedInから応募したり、直接企業の公式サイトから応募したほうが返信率高いので、よかったら試してみてください。
スポンサーできる企業はスポンサーする人を選んでいる
イギリスで言われる一般的な就労ビザはTier2ビザなのですが、このTier2ビザをスポンサーできる企業は限られています。
イギリス政府のウェブサイトにスポンサー資格がある企業一覧リスト:
> https://www.gov.uk/government/publications/register-of-licensed-sponsors-workers
さすがにGoogleなどような国際的に有名な会社はだいたいスポンサー資格を持っていると思いますが、求人サイトに載ってる会社はスポンサー資格がない会社の方が多く(特にIT系の仕事はスタートアップ会社が多い)、一部の会社はスポンサー資格はあるけどエントリーレベルやジュニアレベルのデベロッパーはサポートしない場合が多かったです。
例えば、同じコースの友達はスポンサー資格がある有名な大手日系の会社の面接を受けたけど、エントリーレベルにはTier2をスポンサーしていないと言われたそうです。
そして会社がTier2ビザのスポンサー資格を得るには同じポジションの求人情報を一定の期間出しても就労資格がある人の中から採用できなかったことを証明しなきゃいけないらしく、これが原因でうちの会社にTier2のスポンサーの相談をしたとき「ジュニアレベルのPHPデベロッパーの求人情報を出したらいっぱい応募が来るだろうから難しい」と言われました。
よっぽど自分が企業に必要されていなければ、イギリスで就労ビザをもらうのは本当に厳しいです。それでもイギリスで働きたい方は、以下のビザを考えた方がいいかもしれません。
Tier4ビザ
来年2020年からイギリスの大学・大学院に留学するインターナショナル学生を対象に、大学・大学院卒業後にPost-study Work Visa(2年間就労資格)が与えられるようになるそうです。(ちなみに現在は4ヶ月だけしかありません)
まずはスポンサー資格がない会社で働きつつ、Tier4ビザが切れる前にハードルが高いスポンサー資格がある会社に就職できるように就活するのがいいかもしれません。
日本での経験+イギリスでの学位+イギリスでの経験もあれば、結構心強いと思います。
ワーホリ(YMS)
イギリスのワーホリは抽選式なので、必ずバックアッププランも練らないといけませんが、もし運よく当選できれば二年間イギリスでフルタイム就労できますので、上記Tier4ビザのPost-study Work Visaと同じように、二年間をたっぷり利用してコネを作ったり、スポンサー資格がある会社を狙って就活に励むことができます。
運頼りのビザですが、すでに希望の職種と関係性がある学位を持っている方は向いていると思います。
パートナービザ・マリッジビザ
パートナービザもマリッジビザもほぼ滞在資格の概念から見ると同じで、提出書類も結構似てますが、パートナービザの場合は二人の関係を婚姻書類で証明できない代わりに、二人の関係がいかに本物であると証明しなきゃいけません。そして二年間以上二人が同じ住所に住んでいる必要があるので、場合によっては婚姻関係を証明するよりハードルが高いかもしれません。
私の彼氏はイギリス人なのですが、ビザだけのために結婚したくないので、現在のTier4ビザが切れる前にパートナービザを申請する予定です。
この二つのビザは、共にフルタイムの就労資格がありますので、もしパートナーとの関係がこの二つのビザ申請条件に当てはまるなら、この選択肢は一番現実的で、一番強いと思います。
履歴書は一応フォーマットがある
これは海外就職の難しさというよりも、イギリスで就活する前に知らなかったことになります。
英語の履歴書は日本のと違って自由なイメージがあるかと思いますが、実はイギリスで就活する際はある程度フォーマルな基準を守ったほうが無難です。
私はIT系ならネットで見たカラフルでクリエイティブなレジュメが一般的だと思っていましたが、大学のキャリアアドバイザーに履歴書をチェックしてもらった時に、初めてイギリスには履歴書のフォーマットが一応あると知りました。
例えば:
・名前は一番上の中央揃え
・カラーではなく白黒にする
・ファイルのフォーマットはWordではなくPDFが常識的
・文字サイズは11か12
・フォントTimes New Romanか、Arial
・長すぎちゃダメ(A4サイズ2ページぐらいが理想的)
必ずこれを守らないと落とされるわけではないのですが、ベースラインのルールを守りつつ、自分がアピールしたいスキルが目立つように賢くカスタマイズするのがいいと思います。
また機会があれば、私が学んだ英語の履歴書の書き方についての記事を書きたいと思います(^-^)
まとめ
以上、実際にイギリスで海外就職をした時に目の当たりにした予想外の海外就職の現実について書かせていただきました。
箇条書きにまとめますと:
・海外就職は現地での滞在資格と経験が鍵になります。
・日本にいるうちからできることは資金を貯めつつ、とにかく経験を積むこと。
・単に年数を積むだけじゃ意味がないので、海外で需要が高いスキルを積むようにあらかじめ分析する。
・いきなり就労ビザのスポンサーをもらうのは厳しいから、別のビザなどバックアッププランを考えること。
・フォーマルな英語の履歴書は一応ベースラインのルールがある。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました(*^^*)